きみのうた

くじネタでバンド&スザクさんはぴば!

 

「さあ始まりました、アッシュフォード学園生徒会主催のロックフェス、BEAT in ASHFORD! 出演バンドは以下の3組です! 我らが生徒会メンバーと謎の女C.C.によるCODE BLACK! なんと総統府からお越しになった皇族とラウンズの皆さんでROYAL ROUGE ROUNDS! そして可愛い可愛いお姫様たちPRINCESS PEACH! どんな演奏をしてくれるのでしょうか、ではBEAT in ASHFORD、開演です!」
いつもよりテンション高くミレイが開催宣言をすると、ステージに集まった生徒らは雄叫びや黄色い声を上げて盛り上がった。
照明が落ちたステージの裏では、一組目のバンドが円陣でも組んでいるかと思いきや……。
「おい、歌詞トバすんじゃないぞ坊や」
「自分が書いた詞など覚えているに決まっているだろう、愛する者へのこの想い、立派に歌い上げてみせる!」
(ルル、かっこいい……。太もも見えちゃってるし……どうしよう、あの太ももが皆の目に晒されちゃって……)
「まぁナナリーは出演準備で裏にいるからアンタの歌なんか聞いてないでしょうけど」
「うるさいぞカレン! ナナリーはそんな薄情な子じゃない。……もう時間だ。覚悟はいいな!」
『はーい』
「頼むぞ……」
「なぁルルーシュ……なんで俺もドラム叩いてんのにバックバンド扱いなわけ……?」
「すまないリヴァル……。会長の意向だ」◆◆◆

 

「うわー、ルルーシュ以外に本気だな。もっと嫌々やるのかと思ったけど」
「私情挟みまくり。でも一応記録」
「いやぁ、スザク。先輩はやる時はやる男だな! あ、あのキーボードの子可愛い! でもベースの赤毛の子はとても見覚えがあるような」
「うん、今日は色々忘れよう! 収集つかなくなるから!」

「なあユフィ……どうしてもこの格好でないと駄目なのか? そもそも歌って踊るなど総督としての威厳が」
「いいえ、大丈夫! とってもお似合いですお姉様。お揃いなんて子どもの頃以来ですもの、楽しいです!」
「お前が楽しいなら、それでいいのだが……」
「お美しいですよ、ユーフェミア様、コーネリア様」
「ほらスザクもこう言ってくれていますよ」
「世辞はいらん。枢木」

「ジノ、あれはなに?」
アーニャが指さしたのはステージの骨組みの上に立つ仮面の男だ。
「ジェレミア卿だな。……それ以外は解らない」

◆◆◆

「お兄様の歌声が聞こえてきます」
「ナナリーのお兄様はとっても妹思いな方ですのね。羨ましいですわ」
「神楽耶さんにもスザクさんがいらっしゃるじゃないですか」
「枢木のお兄様は従兄なので、やっぱり実のお兄様とは違いますから」
「私もきょうだいがいないので、お兄様って憧れます」
話がしんみりとしてきてしまってナナリーは少し気まずくなった。しかしそんな空気を打ち破る元気な声が神楽耶から発せられる。
「でも今はロリの時代です! このライヴを成功させたら、わたくしたちにもいっぱいのお兄様ができるのですよ!」
「ろり……? 本当? 神楽耶」
「はい! では最後に通しで一回やりましょう! お二人とも準備はよろしいですか? せーのっ」
そのお兄様はちょっと違うんじゃないかという一抹の疑問を胸に、ナナリーはキーボードでメロディを奏で始める。

◆◆◆

「はい、お疲れさまでしたー! 雑誌用のインタビューもこれにて終了っ! みなさま打ち上げ楽しんでねー!」
クラブハウスのホールにミレイの音頭が響き渡り、あちこちで乾杯が始まった。通常では中々見られない者同士がいつのまにか馴染んでいるのはこの際気にしない。
一仕事終わったと隅の方で盛り上がる集団を静観していたルルーシュのところにスザクが飲み物を二つ持ってやってきた。
「ルルーシュ、歌聞いたよ。すごい詞だった」
グラスをひったくるように受け取ってルルーシュは苦々しげに言葉を紡ぐ。
「……他のメンバーが書いたものを歌うよりはマシだと判断した。それだけだ」
「『見せかけの情愛はいつか 疑惑の刺に変わる 寄り添うなら覚悟を決めて 何もかも受け入れよう』。僕ここ好きだな」
そう言ってスザクは試すようにルルーシュの顔を覗き込む。
「これって僕たちのこと?」
こうして、答えは分かっているのに一々確かめてくるのが、この男のいやらしいところだとルルーシュは常々思っている。
「勝手にそう思っていろ! それよりお前……ユフィのことを何だと思ってるんだ! さっきは全く空気が読めていないし、写真では、か、髪に触るなんて……」
痛いところを突かれたルルーシュは話を変えた。
「君だってハーモニカで間接キスだろ」
「あれは小さい頃の話だ! お前は現在進行形だろ」
二人ともムッとして睨みあうが、自分たちの仰々しい格好と周りの開放的な空気になんだか馬鹿らしくなり同時に表情を緩めた。

「じゃあ次はこっちの服着て二人でやる?」
スザクが見つけたのは、ホールの片隅に置いてあったルルーシュ用にあつらえられたかのようなサイズのROYAL ROUGE ROUNDSのコスチュームだった。
「なぜ俺の分が?」
「わかんないけど、これで僕たちもお揃いだよ。僕がギターで君がボーカルのユニット組んで、それでさ……」
先を促すようにルルーシュはスザクを見上げる。
「さっきのナナリーの話。僕にも歌ってよ。僕だけのために」
そうか、今日は――。
「分かった。二人きりの時にな」
世界で最も歌われている歌を、やっと生を肯定し始めたお前に。

 

リヴァルがドラムってのは私の願望です。