紅の天鵞絨5*

!ゲンルルR-18!

 

その日も食卓は静かだった。父さんがひとつふたつ僕たちにあたりさわりのない問いかけをしてくるぐらいで、あとは食器が触れ合う音と、ルルーシュがナナリーの食事の補助している声くらいしか部屋には響かない。
「ルルーシュ、一局相手をしてくれるかね」
食後、父さんはそう言ってルルーシュを誘った。
いつ頃からか二人はチェスをすることが多くなった。貰ったんだとルルーシュが言っていたチェスセットはクリスタルに輝くとても美しいもので、素人目にも値の張るもののように感じられた。
それはクローゼットのプレゼントの山の中ではなく、部屋の片隅にほこりをかぶることなく置かれているけれど、持ち主も持て余している様子だった。それがたまに棋譜を並べるくらいしか活用されていない原因は、俺がルールを覚えることを投げ出したからだろう。「……はい、分かりました」
「では後で書斎に来なさい」
好きなチェスが打てるというのにルルーシュは少しも嬉しそうに見えない。でも相手が父さんであればそれも仕方ないかなと思えた。この二人の間にはいつまでたってもよそよそしさというか、なにか緊迫したものが漂っている。
けれどその割には父さんはルルーシュによく物を買い与えているようだし、書斎に呼びつけることも多い。それが俺には、思春期の娘との接し方が分からない父親のようですごくかっこ悪く感じた。

 

■■■■■

「なぁナナリー、父さんのことどう思ってる?」
「枢木のおじさまですか? そうですね……、ちょっと怖いですけれど、感謝しています。私が治療を受けられるのもおじさまのおかげですし……申し訳ないんですけれどたまに綺麗なお洋服とかアクセサリーとか贈って下さるんです」
「そうみたいだね。前ルルーシュが言ってた。あんまりたくさん送ってくるから困るって」
「もう、お兄様ったらそんなこと言ってたんですか。いつもお兄様が渡して下さるんです、おじさまからだって」
ナナリーは幸せそうにほほえんでいる。
ナナリーにこんな顔させられるなら、父さんも捨てたもんじゃないなって思った。

■■■■■

「ルルーシュー、数学でわかんないとこあるんだけどー……っと」
部屋のドアを開けて気がついた。そうだ、父さんのところに行ってるんだった。
部屋の中は暗いけれど、その時なにか光輝くものが目に入った。
窓からの月明かりに照らされたあのチェス盤だった。――なぜこれが今ここに……。父さんはチェスをしようとルルーシュを呼び付けたんだ。二人はチェスをしていないとしたら、今何を……?

足元がぐらぐらするような違和感に耐えられず、足は母屋へと向いていた。
渡り廊下を歩いていても、悪い予感に鼓動がうるさい。父の書斎へ近づくにつれて家は灯りが少なくなっていく。
書斎ももう間近というところで僕以外の足音が聞こえた。薄暗い廊下に眼を凝らすと向こうから歩いてきたのは父の秘書だった。
「おやスザク君。そんなに息せき切ってどうしたんだ」
「あ……、ちょっとルルーシュに用があって、父さんの所にいるはずですので」

僕の言葉を聞くと秘書はその顔に、にやにやとした嫌な笑みを浮かべた。この人は昔から、きっと僕が生まれる前から父についていただろう古株の秘書だ。
けれど冷え切った目が子どもながらに信用できないやつだと思ったのを覚えている。
「ああ、今は行かないほうがいいと思うよ」
声に明らかに嘲笑の色が含まれた。そして挑発もだ。
――僕の知らないところで何かが確かに動いている。

「それはどういう意味ですか」
「このまま行けば、きっとスザク君は見たくないものを見るってことさ」
「は……?」
男のもったいぶった言い方に思わず睨みつけるように見てしまったようだ。相手は好戦的な態度を隠さなくなった。
「あの兄妹がこの家に来てもうずいぶん経つね」
いきなり何の話だ。意図は分からないけれど、とりあえず返事をする。
「もう7年くらいですが? それが何か」
「いつからか兄の方が先生のところによく行くようになっただろう。おかしいとは思わなかったかい? なにをそんなにこそこそしているのかって」
秘書の眼鏡の奥の目が光る。口は醜く歪んでいた。
「ブリキは卑しいねぇ。皇子様でもやってることは娼婦と大差ない」
「は?」
――あぁっ!
その時、廊下の奥から悲鳴が聞こえた。

■■■■■

「はは、チェス盤はどうした。とうとう持ってこなくなったか」
――なにがおかしいのか。どうせ端からチェスなど口実に過ぎない。当初は言われるがまま対戦していたがこの男の腕前では正直相手にならない。俺に打ちのめされて興がそがれたのか、次第にチェスセットを持ってきてもそっちのけで迫られるようになった。
「大切なお話がございましたので」
「ほう、聞こうか」
「妹の治療のことですが、新しいリハビリ器具を医者に勧められました」
枢木ゲンブは続きを促すように頷く。奴の大きな机の前に立たされてまるで尋問を受けているようだ。
「それが……、非常に高額でして」
「そうか。分かった。用意しよう」
目をぎらつかせて男が席を立ちこちらに近づいてくる。
腰を抱かれ、もう片方で顎を持ちあげられた。降ってきた口づけは煙草臭くて顔を背けたいけれど、俺は男の首に手をまわして続きを媚びた。
こうしなければ生きていけないのだ。

今日は嫌にしつこい。
「んぅ、あ、あぁ」
むさぼるようなキスの勢いのままソファに押し倒された。シャツの裾から手が入ってきて全身が総毛立つ。
同時に首筋に啄ばむように口づけられて気持ち悪さを感じているときつく吸いつかれた。また痕をつけられたのだろう。行為の痕を残すのはやめてくれとあれほど言ったのに、この男は一向にその癖を改めないのでもう諦めた。もう耄碌し始めたのか。
痕を付けられるのは非常に厄介なのだ。以前スザクに見咎められた時は全身の血管に氷が走るような思いだった。あいつはこれを見てどう思ったのだろう……。

「ひぁっ」
「ここを触る前からこんなにしこらせて……」
詮無い思考から俺を引き戻したのは乳首への鋭い痛みだった。いきなりの刺激に身体が勝手にビクつく。反応なんてしたくないけれど、男を喜ばさなければ目的は達成されない。淫乱だとなじられる身体は不本意だけれど、気に入られるのならと感じるがまま声を出した。
「触ってほしかったら下を脱ぎなさい」

この男は命じるのが好きだ。数年前までこの国のトップであり今も国政に大きな影響力をもつ、紛れもない権力者の性だろうか。
肩で身体を起こし腰を上げてズボンと下着を自分で下ろす。足首でもたついていると最後は乱暴に男の手で引き抜かれた。下着から勢いよく出てきたものが捕食の目に晒されて、その先がひくついてまた潤みが滲んだのが自分でわかった。
「あぁっ」
粘着質をまとった指が後ろに入ってくる。痛みを伴う挿入がもたらすものは圧迫感ばかりではない。入口も感覚が集中していて触れられると気持ちいいけれど、肉の筒の襞を擦られるのもたまらなかった。
「はぁん、ん、ん!」
「ここがいいのか」
「あぁ! あ、そこ」
中のある一点を突かれると、背筋から頭へ快感が走って何も考えられなくなる。そこばかり狙っていじられるともうだめだった。後ろはいいところを何度も擦られて、前も扱かれて、頭が快感に支配される。理性を失った思考は、更なる刺激が欲しくてねだる腰を止められない。

 

「あっ、あ! あー……、も、だめ、ぁ、もっとぉ……」
こんな頼りないものではもう満足できない。もっと大きくて、太い……。
「いれ、挿れてください、あん」
「なにをだね。はっきり言いなさい」
「ん、これっ、おじさまのっ」
我慢できなくて男のペニスを布越しに擦り立てる。
「駄目だ。何度も教えただろう、これは何と言う」
嫌だと首を振っても許してはくれない。でももうだめなのだ。あれで擦って突かれないとこの身体は満たされない。

「おじさまの、あん! お、おちんぽ、おれのあっ、アナルにいれてくださいっ!」
「はっ、この淫乱めが!」
いきなりぶちこまれても俺のそこは痛みも感じない。
あるのは圧迫感と、前立腺もろとも肉筒全体を雄で擦られるおかしくなりそうな感覚と、不思議な安心感だった。
「あぁーーっ! あん、あっ! はぁっ」
「まだいくんじゃないぞ。今日はもっといいイキ方を教えてやるからな」
男の手にペニスの根元を握られていなかったら、俺は受け入れた快感できっと盛大にしぶきを飛ばして達していただろう。
待ちわびていた質量にナカがこぞって吸い付くのがわかったけれど、せき止められた流れがあそこでわだかまってつらい。
「やっ……、あ! だめぇ」
「お前ならもう後ろで充分感じられるだろう、このまま握っていてやるからな」
「いやぁ、あぁん、いかせて、出させてぇ」
願いは聞き届けられず律動だけが激しくなるばかりだった。張り出したところで入口を擦られて、そのまま一気に奥に叩き込まれたかと思うと中をぐちょぐちょと全部かき回される。
「あ、あん! ひや、きもちい、ああぁ」
「涙もよだれもすごいぞ、だらしない。いやらしい顔して、ここまでスキモノになるとは思わなかったな」
「ひゃあ、あー、あー……んあ!」

どれだけ詰られようと身体の反応はとめられなかった。
前を握る手を外そうと手を伸ばすが軽く払われ、行き場のない腕で顔を隠す。視界を覆うと目の前の出っ張った醜悪な腹を見なくてもよくなるし、感覚がより研ぎ澄まされる気がした。
あの日、想像での愉しみ方を教えられて以来、極めるときはいつも同じことを考えるようになってしまった。罪悪感は募るけれどやめられない……。
「もう、あぁ……、もうイかせてぇ……、あぁっ!」
「ほら! このまま、いきなさい!」
揺さぶりが激しくなった。俺のペニスは握られたまま。尻を持ち上げられて、垂直にずんずん突き込まれてもう頭はそのことでいっぱいだった。
「うあ、あ! あぁ……、も、おかしくなるっ」
「そうだそのまま感じなさい」
「ひゃあ、あ、くる、へん、らめ……」
今までに感じたことのない感覚についていくことができなかった。
「あああああ――――っ!」
抑えきれない解放に身体中ががくがく震えた。
ナカから背筋を通って頭まで走り抜けたそれは、今までにない程強い快感だった。
「はは、出さずにイけたな。ドライオーガズムまで覚えるとは、やはりお前は天性の淫乱だよ」
「あっ、あ、あーっ……」
「聞こえていない、か」
身体が脈打つ度に声が出るのをとめられない。後ろがヒクつく度に気持ちよさがまた襲ってきて、ナカのモノが感覚のすべてになる。もっと、もっとソレで気持ちよくしてほしくてたまらない。
「あん! あっ、おちんぽ、おちんぽきもちいよぉ」
もう何を言っていたかわからない。きっと素面で聞いたら卒倒するようなことを平気で口にしていたのだろう。
あの強烈な波から、ずっと頭が絶頂を感じ続けている。こんなのはおかしい。こんなのはいけない。
「ひゃあ、あ、も、むり、ずっといっちゃ」
「くっ、出すぞ!」
「はぁん!」
ナカに打たれた熱さでもまたイッてしまう。締め付けを味わって精を出し、威力をなくしたペニスが引き抜かれた。けれどまだそこが収縮するのを感じながら、白くなる世界に飲み込まれた。

■■■■■

「今のはっ!?」
「ははっ、今日も彼は頑張ってお仕事中だ。本当にいい声で啼く」
「何をっ」
認めたくはないけれど、今のは間違いなくルルーシュの声だ。俺の聞いたことのないルルーシュの声。血が騒いで、思わず走り出していた。
「やめときなさいって」
後ろから秘書が追いかけてくるが知ったことではない。書斎に近づくごとに高い声ははっきりと聞こえてきた。中で父さんはルルーシュに何を――。
ノブに手をかけた所で今までより鮮明に聞こえたのは親友の一番聞きたくない声だった。
『――――あん!あっ、――きもちい――だめ、いくっ』

鈍器で頭を殴られるほどの衝撃だった。ノブを握ったまま手を動かすことができない。
そのまま硬直している僕の耳に届くのはルルーシュのあられもない声と、父の聞きたくもない荒い息とうめき声。
「うわぁ、今日はまた凄いな」
「……」
何も言えない俺を置いて、秘書は何が楽しいのか弾んだ声で喋り続ける。
「最初はね、一丁前に抵抗して見せるんだけどね。挿れられたらもう乱れ様が凄いんだよ。あんな淫蕩見たことがない。男の子なのにね。生まれる性別を間違ったんじゃないのかなぁ。あれで先生に媚を売ってね、お金やプレゼントをいっぱい貰ってるそうだよ。先生も甘いよねぇ」
「あなたは、何を知って……」
「聞きたいのかい?」
全てを知っていると言いたげな秘書の顔。扉を一枚挟んで僕がここにいるとも知らず続けられる行為。
そして僕は先日見たルルーシュのクローゼットを思い出した。あれは、全てこんな行為で得たものだというのか、あのルルーシュが!
「まぁわざわざ私から聞かなくてもそのドアを開ければ全てが分かるよ」
「人のそんなところを覗く趣味はありませんっ!」
「それは賢明な判断だ……。じゃあもっといいものを見せてあげようか」
そう言って秘書はスーツのポケットから携帯を取り出し、何やら操作したあと画面を僕の前に突き出してきた。
「……!」
「いやらしいだろう、一度に三人も相手したんだ。口も尻も良かったよ……。先生が夢中になるのも頷ける」

無意識に拳を振り上げていた。
ガッという鈍い音と共に、秘書は僕の拳の勢いで1メートルほど飛んだ。
それでも俺はそれを追いかけて、殴り続けた。男は抵抗したけれど、俺に勝つことは出来なかった。そいつの意識がなくなるまで殴って殴って――
殴り続けるうちに頭は自然と冴えてきて、俺は過去の問題の答えを得た。
前にルルーシュをさらって暴行したのはこいつだ。
涙が出そうなほどの怒りに、拳は止めようとしても止まらなかった。
気がつけば男は気絶していた。
俺は一遍に降りかかってきた予想もできなかった真実が怖くて怖くて、男も父さんの部屋もそのままに走り出していた。

■■■■■

気配を気付かれないように足音を立てずに逃げ帰るように離れまで走ってきた。
事実を知ると合点がいく事ばかりだ。白い肌に散らされた赤い痕。真っ青な顔で具合が悪そうにしていた日は父に呼びだされた翌日ではなかったか? それでもルルーシュは何も言わずにいつもと変わらず笑っていた。

――なんでだよルルーシュ!
苛立ちは彼に対するものか、今まで何も知らずにきた自分へのものかわからない。
ルルーシュがあんなことを金の為に好き好んでしているのだろうか。そんなことないと言い切りたいけれど頭の一部はあの声を思い出す。
あれは明らかに感じていた……、悦んでいた声だ。聞いているこちらをも変な気持ちにさせるような……。
いや、父さんはルルーシュを、あの清らかさを汚したんだ!
違うな、この怒りは。わかった、これは嫉妬なんだ。
僕は父さんが憎いだけなんだ。
あの身体を好きにして、あんな声を出させて! ルルーシュは僕のものなのに!

 

ふと気がつくと廊下から足音が聞こえる。ルルーシュが帰ってきたのだろうか。
いや、彼の足音じゃない。これは……。
「……父さん」
「なんだ、起きてたのか」
歩いてきたのはやはり父だった。腕に眠ったルルーシュを抱えているのを見て頭に血がのぼるのが分かった。
「放せよ!」
「……なに?」
「ルルーシュを放せ!」
返事を待つより早く僕はルルーシュをこの腕に奪い返した。ぐったりした彼の体は確かな質量をもってこの腕の中にある。顔色をなくしているのは気を失っているからだろう。
「大きな口を利くようになったな」
「……どういう事なんですか」
「……」
「なんでルルーシュをこんな目に遭わせるのか聞いてるんです! これじゃ……虐待じゃないか!」
知らず大声で怒鳴っていた。父の前でこんなに感情を露わにしたことは今までなかったかもしれない。
「はっ、私がそれを無理矢理犯したと思っているのか」
「……っ」
「これは正当な取引だ。これは懸命に媚を売り、私はその報酬としてこれとその妹の生活を保障している。それだけだ」
腕の重みがなかったら、きっと父を殴っていただろう。
「そうでもなければいくら皇子と言えど捨て子の世話などやってられん。まあ兄にそのがなければ、妹の方にしていたまでよ」
廊下に下品な笑い声が響く。これまでも散々感じてきたが、今ほど自分にこの男の血が流れていることを恨んだことはない。

「自分だけならまだしも……部下にまでさせるなんて……。信じられない、あなたはルルーシュをどうしたいんだ!」
「部下……? なんのことだ」
今まで俺を嘲笑っていた瞳が一瞬にして真剣な色に変わった。
「あんたの秘書がルルーシュを誘拐して……三人で乱暴したんだよ!」
「なに……それは本当か」
「そうです。さっき自分から誇らしげにその話を僕にしてきましたよ。そんな人間を枢木に出入りさせないで下さい! ルルーシュをこれ以上つらい目に会わせないで……」
父さんは少し考えた後、重々しい声で言った。
「ああ、分かった。あやつには暇を出す。しかしあやつと私は違うぞ。私とこれとの契約をお前にどうこう言われる筋合いは無い」
俺は自分の力ではルルーシュを救ってやれないことが悔しくて仕方なかった。
「いつまで……、いつまでこんなことを続けるつもりですか」
「そうだな、これが私を頼らずとも生活できるようになったら、もう強請ることもなくなるだろうよ。あの金のかかる妹がいる限り無理だろうがな」
これ以上兄妹を侮辱する言葉を聞きたくなくて、父に背を向ける。こんな奴の話を聞
いているよりも、ルルーシュをちゃんとベッドに寝かせてやらないと。
僕が部屋の方に歩きだすと、父は大きな声で宣言した。

 

「それは私の秘書にする」
「は……!」
振り返って見た父は変わらず仁王立ちのままだ。
「それはブリタニアの内政に最も詳しいと言えるだろう。特に皇族の実際の人柄というのは得難い情報だ。拾いものだがまだ使いようは充分にある」
「そんな、またルルーシュを政治の道具に!? そんなことはさせない!」
「何を言っている、お前のためでもあるのだぞ。私の跡を継げば次にそれを使うのはお前だ。お前の為に使える秘書に教育してやろうと言うのだ」
「……なにを……」
「いいか、改めて言っておくがお前は枢木の嫡男だ。いずれは政界に入ると最初から決まっているのだ。今更どうこう言う問題ではない」
ああ、今までも散々聞かされてきたさ!
けれどその言葉がこれほど重みを持ったことはなかった。僕のためにルルーシュが縛られ続けるなんて……
「余計なことは考えずに、お前はまず大学に入れるように勉強しろ。あまりに馬鹿だと裏口のしようもなくなる。そうだ、それも同じところに入れるからな。相応の学歴は必要だ」
そう言って父は堂々とした歩みで本邸に戻っていった。

――本当に僕たちの未来は動かないのか?