結婚

同性婚で軍人×学生スザルル。パラレルだけど軍はある。

ランスロットは自身の周りに組まれた足場の内側から、主人とその部下たちが自分をメンテナンスする様子をハラハラしながらずっと見ていた。
あー危ないなぁ、早く気づいてくれないかなぁ。ほら、あの子ちょっと集中すると周りが見えなくなるところあるから。あと君の上司は本当に無責任だよね。
「え? ちょっ、なに、ああっ!」
「シュネー!? うわ!」
あーあ、やっちゃった。僕ずっとそうなるって思ってたからご主人に目線で伝えてたのに。でもご主人はロボットの声とか感じないというか、所詮僕のこと道具と思ってる人だから伝わらないよね――
などとランスロットが微動だにせず考えている間に、ナイトメアの修理ドックにドサッと鈍い音が響いた。

「……っつ……う」
「……え? スザクさん? スザクさん!」
衝撃に耐え起き上がったシュネーが見たのは、苦悶に歪むスザクの頭部から血液がじわりと床に広がっていく様だった。
「枢木准尉! ……セシルくん、医療班を」
「今かけてます!」
「そんな……起きてください! スザクさん」
「揺らしちゃダメだ。医師を待とう、シュネーくん」
「はい……っ」
ま、僕のご主人だったらこれくらいでは死なないけどね。毎回毎回好んで窮地に陥って、あの人どうやったら死ぬんだろうっていつも思うくらい丈夫だから。
落ち着いているのはランスロットくらいで、ドックは上を下への大騒ぎになった。

「流石の身体能力です。受け身が取れていたので軽い脳震とうと……あばらが折れてるぐらいかな。出血はそこまで大したことないでしょう。でも意識が戻るまでは念のため病棟に入院ですね」
駆けつけた軍医が割とあっさりと診察を終えると、スザクはロイドとシュネーが見送る中ストレッチャーで病棟に運ばれていった。
見るからに自分を責めて憔悴しているシュネーに一応ロイドが声をかける。
「大丈夫だよ〜、シュネーくん。スザクくんが頑丈なことは君だって知ってるだろう?」
「……でも、准尉は私をかばって……」
「まぁ、君が無事でスザクくんは喜ぶよ。で、セシルく〜ん!」
「分かってます!」
セシルはスザクの緊急連絡先を探すため、端末でブリタニア軍の個人情報データベースを呼び出していた。個人情報の塊なので軍内でも限られた人間しかアクセスできないものだが、ロイドの権限を使えば簡単だ。本人も了承して事務仕事をセシルに任せっきりにしている。
(SUZAKU KURURUGI……あった。これね)
タップした先のページにはまだ少年ぽさを残した数年前のスザクの写真が表示された。
スザクは両親ともに既に他界していると聞いていた。そのため連絡先の欄は空白かと思われたが、セシルは意外な文字列を見つけた。そして驚きのあまり無意識に二度瞬きをした。
(……配偶者……?)
「LELOUCH LAMPEROUGE」
思わず小声で読み上げたその名は、珍しいユーロピア調の響きで、でも確実に男性のものと思われた。
「ちょっと! ロイドさんロイドさん」
セシルはタブレットから目を離すことなく上司を手招きで呼びつけ、その箇所を指し示した。
「これって……!」
「ああ、そうだね」
光の加減で表情が読めなくなることがあるこの男は、眼鏡の下で意味ありげに目を細めて指示を出す。
「ちょっと大事になっちゃったし、この人に電話してもらえるかな」

「それにしても驚きました。スザクくんが結婚していたなんて」
セシルは病院近くの花屋で買ってきた小さな花束を窓辺に飾り終え、簡素な造りの折りたたみ椅子に腰掛けた。ロイドは小さなソファに我が物顔で足を伸ばし寛いでいる。一応伯爵であるロイドのコネでスザクは個室に入れてもらえたのだ。当のスザクはまだ意識が戻らずベッドに横たわっている。
「僕は知ってたよ」
なんで私には教えてくれなかったんだろう、と少しショックを受けている様子のセシルに、ロイドはいつものように薄笑いを浮かべながら事情をかいつまんで説明した。
「スザクくんが報告してきたよ。僕も曲がりなりにも上司だからね~。彼、そういう義理は通すタイプでしょ? でもあんまり大っぴらにはしたくないみたいだったから。やっぱりまだ珍しいし。それに彼はただでさえ有名だ。で、とりあえず僕だけに教えてくれたってこと」
「そうだったんですか……」
ロイドは大きな眼鏡の奥の怜悧な瞳を細めてセシルを見ている。セシルはずっと心配そうに眉尻を下げて横たわるスザクを見つめていた。
「それにしても早いですね。スザクくんまだ19でしょう?」
「そうだね〜。相手も同い年で、まだ大学に行ってるとか言ってたかな。もうそろそろ来るかもね」

そこで三度ノックの音が鳴り、セシルがロイドに目で合図しながら「どうぞ」と促すと、中に入ってきたのはすらっとした青年だった。
セシルはまずその青年の容姿に驚いた。モデルのような体型に沿ったぴったりとした服装は痩躯を引き立てて、腕にかけているコートとマフラーはきちんと畳まれている。育ちの良さが見て取れた。
「はじめまして。枢木がいつもお世話になっております。ランペルージと申します」
深々と頭を下げるルルーシュに、セシルも思わず椅子から立ち上がっていた。ルルーシュの仕草はまるで日本人のようで、見るからにブリタニア人の彼にはそぐわなかった。人はこれほど傍にいる人間の影響を受けるのかと後ろで見ていたロイドは面白く感じた。
「私がご連絡差し上げたクルーミーです。この度は私共がついていながらスザクくんにこんな怪我を……」
「いえ、どうせまた無茶をやったんでしょうから」
困ったように笑いながら、ルルーシュはスザクが横たわるベッドに近づいた。その足取りは速く、口では皮肉を言っているがその目は揺れていて、スザクをかなり心配しているのがセシルには分かった。ルルーシュはベッドに横たわるスザクの全身をしっかりくまなく見た後、一番近い椅子に陣取ると口を開いた。
「それで……一体何があったんですか」
ぎりぎり威嚇にならない程度の低い声だった。ルルーシュは内心怒りに燃えていたが、スザクの上司の手前、好青年を演じているのだ。
こんなことがいつか起こると思っていた。今回は命が助かったけれど、また、もしくはこれ以上重い事態に発展する危険は、軍にいる以上存在し続ける。

ルルーシュのもたらす張り詰めた空気に、セシルは気まずそうに話し出した。
「機械の整備中だったんだけど、ちょっと足場が悪いところでね。スザクくんは上の段にいた部下の子がつまづいて転げ落ちそうになったところを抱えて、そしたらバランスが崩れて上から荷物が落ちてきて……」
「地面に強かに打ち付けられたってわけ。流石の彼も片手に部下、もう一方にスパナ持ってたら地面に真っ逆さまだよね〜」
「なに他人事みたいに言ってるんですか! 元はと言えばロイドさんがあんなところに工具箱を置きっぱなしにしたのがいけないんですよ!」
この部署の安全管理はどうなっているんだとルルーシュは怒髪天を衝く勢いだったが、それはおくびにも出さず「そうですか」とだけ答えた。命綱くらいも用意できないのかブリタニア軍は! それに物は出したら片付けるのなんてことは幼稚園で習うものだ!
「本当に申し訳ないです。ほら、ロイドさんも」
「ごめんねぇ〜。次から気をつけるから」
こんなひょろひょろした頼りない奴が上司だなんて、とルルーシュの軍嫌いがますます進行していく。
「いつもスザクくんは真面目に一生懸命頑張ってくれてるんですよ。彼はナイトメアの操縦能力がずば抜けて高くて、本当に頼りにしてるんです、私たち」
「そうですか」
セシルは持ち前の生真面目さでなんとか場の空気を良くしようと頑張った。しかしルルーシュは難しい顔のままだ。
「もうすぐ昇進試験があってね、昇格は間違いなしだと思うの。ねっロイドさん」
「そんなのあったっけ? それよりさぁ〜」
ロイドはルルーシュが来てからずっとうずうずしていた。どうしても好奇心を抑えられなかったようだ。

「キミはスザクくんの旦那さま? それともお嫁さんなのかな?」
その遠慮の全くない質問にルルーシュは一瞬目を丸くしたが、すぐに完璧な笑みを作った。
「ロイドさん……そういうことはあまり他人が詮索することでは」
「構いませんよ」
ロイドを咎めるセシルを手で制して、ルルーシュはそのあけすけな質問に笑って答えた。
「では、夫ということで」
青年は先程とは打って変わって微笑んでいるが、これ以上の詮索を許さない感じがあって、セシルは心の中で線を引かれたなと感じた。それも油性マーカーの太い方で引いたようなくっきりとした太い線だ。
完璧な笑顔は美しくて冷たくて恐ろしい。にっこりしたままのルルーシュとへらへらしたロイドは我慢比べのように微笑みあっている。セシルは場の空気についに耐えられなくなった。
「の、飲み物! ランペルージさん喉乾いたわよね、今飲み物買ってくるから。ほら行きますよロイドさん!」

引きずるようにロイドを病室から連れ出し、二人は自動販売機があるロビーに向かった。病棟は沢山の患者と医療関係者でひしめいている。
「なんであんなこと言ったんですか!」
周りの迷惑にならないようにセシルは小声でロイドを叱りつけた。
「だって気になってさ〜」
さすがのロイドも失礼だったと思ったのか声を落として言った。
「あの子怒ってたね」
「……それも当たり前です。ロイドさんがあんなこと言うし、そもそも家族を事故に遭わされたんですから」
「ふぅん。『家族』ねぇ」
「色んな家族の形があるんですよ」
「僕にはちょっと難しいかな〜」
セシルは、でしょうねと内心思いながら微笑むに留めておいた。この人に人間の気持ちの機微は難しい。

二人が出ていった後、ルルーシュはスザクと二人病室に残された。
やっと部外者が去ったと清々したルルーシュは、スザクの頰に触れてみた。まだ意識は戻らない。でもちゃんと体温が感じられてほっと息をつく。その時ノックの音が響いた。ルルーシュはサッとスザクから手を離し、返事をした。
「失礼します」
入ってきたのは、スザクよりも二つ三つ幼いくらいの二人の少年だった。片方の、金髪を撫で付けて幼さを必死に隠しているような少年はかなり緊張して声が震えている。
「わ、私たちは枢木准尉の部下で、シュネー・ヘクセンです」
「同じくレド・オフェンです。枢木准尉にはいつもお世話になっております」
もう一人の色黒な方の少年は落ち着いていて大人びて見えた。
「いや、こちらこそいつも枢木が世話になっている」
ロイド達に対する時とは打って変わって、ルルーシュはにこやかに二人を迎えた。しかし心の内では二人が軍人だということに苛立ちを感じていた。まだこんなに若いじゃないか。ナナリーと変わらないくらいなのに、こんなスザクでも怪我をするような危ない現場に立たされているなんて、と。やはりこんな危ない職場早く辞めさせなくては。スザクには俺が安全でやり甲斐のある高給な職を見つけてやる。なんなら俺が養ったっていいんだからな!

レドたちは、廊下で会ったセシルたちから既に病室にスザクの『配偶者』がいることを聞いていた。シュネーはスザクに怪我をさせてしまったことで頭がいっぱいでそこまで気にならないのか話半分にしか聞いていなかったが、レドは一体どんな人だろうと興味を持っていた。自分はあまり他人に興味を持たない方だと思っていたが、スザクが結婚していたことには驚いたし、そもそもあの人当たりがいいようで頑固な朴念仁のスザクと添い遂げようとする奇特な人間がいることにも驚いた。そんな人の顔が見てみたかった。
ドアを開けるとそこには粗末なパイプ椅子に座っているのが不似合いな程の綺麗な人がいた。ぱっと見では男性なのか女性なのか判断がつかなかったが、よく見ればわかる喉仏の盛り上がりや長い手足が彼を男性だと物語っていた。

「こ、この度は、私の不注意で枢木准尉をこんな目に……。本当に申し訳ございません!」
全力で頭を下げるシュネーにルルーシュは爽やかに笑って応えた。
「ああ、気にしないで。君に怪我がなくてよかった。それに、こいつが好きでやったことだろうから」
「え?」
シュネーは目を丸くした。
「そういう『人の為』とか好きなんだ。こいつ」
身を挺して他人を守って、それで自分が傷ついても構わない。むしろそのことに喜びを感じるなんて、こいつの性根はいつからこんなに屈折したのだろう。昔はそんなことはなかったはずだ。
「でも」
シュネーは顔を上げてきっぱりと切り出した。彼なりに、こんなに近しい人にスザクが誤解されたままではいけないと思ったのだ。
「准尉は以前、入隊したての私に最初に教えて下さいました。自分の周りの人を守りたいなら、まずは自分を守れって」
虚をつかれたルルーシュは、続くシュネーの言葉を待った。
「自分が傷ついて泣く人がいるなら、その人の為にも自分の体を守れって」
「スザクが、そんなことを……?」
「はい。だから、准尉はご自身が周りから想われていることを分かってらっしゃると思います。その大事な身体で私を助けて下さいました。本当に感謝しています」
「……そうか……」
なんだ。俺の想いは伝わってたのかとルルーシュはこわばっていた心が暖かくなった。だが、それを分かっていながらこんなことをしてしまうのはもうスザクの生まれつきの気性なのだと。もう仕方ない。それを受け入れようと思った。

会話に加わっていなかったレドはスザクの変化にいち早く気づき声を上げた。
「准尉」
ルルーシュとシュネーもベッドへ寄りスザクの顔を覗き込んだ。
「……ん……あれ……」
スザクはぼーっとした目で辺りを見回し、ルルーシュを見つけると驚いた様子で掠れた声で名を呼んだ。
「ルルーシュ……? なんで」
「この、バカがっ!!」
「わっ、落ち着いてください! ケガ人なんですから!」
先程までの落ち着いた印象はどこかへ飛んでいってしまい、今にもスザクの首を締め上げんとばかりに摑みかかるルルーシュの姿に、シュネーは驚き思わず大声で制止していた。
「落ち着いてなどいられるか! だから軍人なんて辞めろとあれほど口を酸っぱくして言っただろ!」
後ろでレドは面白そうにその様子を見ているばかりだったが、これがスザクの夫の本性かと、今まではよそ行き用に猫を被っていたのだなとほくそ笑んでいた。面白い人だ。
「いたた、ルルーシュ、ごめんって。ここ病院?」
「はい。准尉は足場から落下して怪我をされここへ運ばれました。大事はないと聞いています」
レドは冷静に事の経緯を説明した。ルルーシュはまだスザクの入院着の襟を掴んで離さない。
「そっか。シュネーは無事だったんだね、よかった」
「スザクさん、本当に、私をかばって」
「いいんだよ、シュネー。あの状況だったら誰だってそうするよ。それに大したことないみたいだ。あんまり痛くないし」
「それは今は鎮痛剤が効いてるんだ!」
「うぅ……」
「もう泣くなよ。じゃあオレたちは仕事に戻ろう。今キャメロットは無人だぞ」
「すぐに復帰するから。それまでよろしく、二人とも」
シュネーとレドは了解しましたと敬礼し病室を出ていった。

二人きりになってやっとルルーシュはスザクの襟を離し、椅子に倒れるように腰掛けた。
「ルルーシュ、来てくれたんだ」
「はぁ……来てくれたじゃない。全くお前は何をやってるんだ」
「へへ……ごめんね。心配かけた」
「……お前に何かあったと思ったら……!」
スザクは次を促すように「ん?」と目で問いかけた。その先を言わせたいのだとルルーシュも分かった。その誘いに乗るのは癪だが、こんな時くらいは素直になってもいいかもしれないとルルーシュは思った。
突然覚えのない番号から電話が来て、出てみたら軍関係者だった時の肝の冷える思いは、自分が普段どれだけ目の前の男を失いたくないと思っているのかをまざまざと自覚させられる体験だったからだ。それから取るものもとりあえず、リヴァルの声を背中で聞きながら講義を抜け出して駆けてきたのだ。
「……お前を、軍にどうにかされたらって」
「どうにかされるって。はは、面白い表現するよね。ルルーシュは」
「真面目に聞け! お前がいなくなったら、きっとそれはものすごく……俺にとっては喪失で」
うんと頷きながらスザクは包帯が巻かれた上にネットを被された腕を伸ばし、ルルーシュの組まれた両手に上からそっと手のひらを被せた。
「怪我が大したことなくて本当によかった」
「ごめんね」
「謝れば済むと思うな。このバカ」
いつもはふよふよと自由にしている茶髪が白いネットに包まれているのが窮屈そうで、ルルーシュは手を伸ばしてそれに触れた。額にはガーゼが貼られている。心配そうにそこを検分する。
「血が出たって」
「あぁ、これ大袈裟だね。頭は少し切れただけですごい出血するって言うし」
眉根を寄せて困ったように笑う目の前の男が、ルルーシュは急に愛しくなった。先ほどのシュネーの言葉。俺ばっかりがスザクを心配して空回りしていたわけじゃなかったんだ。そう思ったらガーゼの貼られた頭部の傷のあたりに口づけていた。
「えへへ。どうしたの」
ルルーシュのいきなりの、しかも珍しい行動にスザクは嬉しそうに目を細めた。
「な、なんでもない」
「ありがと。ルルーシュがキスしてくれたら早く治るよ」
「本当にバカだな。お前は」
スザクが上に顎を突き出すようにして二人は唇を合わせた。その時。

「あ、意識戻った?」
ガラッと今度はノックもなくロイドが扉を引き首を突っ込んできたので、二人は弾かれたように離れた。見られたかとルルーシュとスザクが目で会話しているうちに、ロイドはニヤつき、何も知らないセシルは爽やかに顔を綻ばせた。
「良かったわ。じゃあ先生呼んでこないと。ルルーシュさん、これ飲んでね」
「ありがとうございます。いただきます」
セシルは抱えていた数本の缶ジュースをベッド横のテーブルに並べると、医師を呼びに出て行った。

「なんか……嬉しいな」
ぼそっと漏れた呟きに、ルルーシュとロイドはきょとんとスザクを見つめた。
「いや、こんなに人に心配されたことって今までなかったかもって」
頰を掻きながら顔を赤らめて吐露したスザクに、二人は同時に言葉を返した。
「……それはお前の普段の行いなんじゃないか」
「君がいないと僕のランスロットは完成しないんだから」
自分の声と被ってあまり聞き取れなかったが、ロイドがとんでもないことを言ったように聞こえたルルーシュは、その白い顔を唖然として見た。会って初日のルルーシュでもロイドは自分(の研究)のことしか考えてないやつだと感じ取った。やっぱりこいつの元にスザクを置いておくのは危険だ。なにかスザクの能力を生かせるビジネスを考えなくては……。
「ルルーシュくん」
「はい」
ルルーシュは頭の大部分では新事業のことを考え、隅の方でロイドに返事をする。どうせろくでもないことに違いない。
「君はいい人間を夫にしたね」
「え……?」
思いもかけないロイドの言葉にルルーシュは呆気にとられた。しかし、すぐに不敵な笑みでこう答えた。
「そうです。俺の自慢の夫ですから」
スザクはそのやりとりを不思議そうに、しかし幸せを感じながら聞いていた。

おまけ
ルルーシュが無難にホットのブラックコーヒーに手を伸ばした時、ロイドは既に手に持っていた缶をおもむろに振りだした。
「それは……」
「これ? プリンシェイク。美味しいよぉ〜。こうやって振って自分の好みの固さにして飲むんだよ」
「へぇ……珍しいですね」
「あ、飲む? 一本しかないから僕とシェアだけど」
「結構です」
プリンという単語に、ルルーシュはもし彼が猫だったら耳がピンと立っているだろう敏感な反応をした。あれは興味が無い風を装って、帰りに買っていこうとしてる顔だなとスザクには分かった。クールで何を考えているか分からないように見えて、その実、情に厚くて、慣れれば心のうちに入れてくれる。可愛いところのある人なのだ。
僕の夫は、こんな人です。

医療関係はすべて素人が書いたフィクションです。
正直スザクさんが怪我する状況ってなくない??と書いてる間ずっと思ってましたがまぁフィクションだからさ……大目にみてください。